初日観劇レポーター Bブロック(マエ田マオ)

●B-1 劇団ACT(京都産業大学)
『ドグラ な マグラ』
 
「本当に45分しか観ていなかったの……!?」と思わせられました。ひじょうに、ひじょうに、密度が高くて濃い時間を過ごしました。
主人公の男性役を演じておられるのは女性の役者さんなのですが、どこか少年的な面影もふと感じさせるきれいな声をお持ちの方で、ある種中性的だともいえるかもしれない『THE・主人公』なその姿。そして、そこに過去を描写したシーンの効果なども相まって、なんだか壮大な冒険に自分も引き込まれていくような、そんな風に途中思う部分もありました。
ですが。これは決して、決して、ただ清らかですっきりしたお話なんかではない。じんわりと、しかし確実に‘狂い’に包まれていった感覚が、観劇後の今も活きたものとして手元に残っています。
わたしがこの物語で一番好きだったキャラクターは、若林さんという男性です。どこに焦点がおかれているのか見透かすことなどできないような、まるでその奥底が見えないような、そんな目の表情が個人的にとても好みでした。所々で紳士的にも見える、ゆったりとした身のこなしも魅力的。
「この場面ならこんなMEがあればいいな」と期待したところで、まさにそのイメージ通りのものが流れツボをおさえてくる音響効果も良かったです。Bブロック1発目の作品、皆様もぜひじっくりとご覧ください。
 
 
 
●B-2 コシヒカリのナナピカリ(立命館大学)
『ヘルツシュプルングラッセルず』
 
こちらは、大会を目前にしたとある演劇部のお話。あらゆるところに散りばめられたちょっとした笑いどころがとても楽しくて、つい口元をにやにやさせながら観てしまいました。かといって、その小ネタたちが気を引きすぎて物語の流れを邪魔してしまう、なんていうことが全くなく、終始何のストレスも感じずに観ることができました。
演劇部・演劇サークル出身者ならきっと誰もが「そうそう」と心当たりのあることかと思うのですが、演劇をやる環境に集まってくる人々というのは、ひとクセやふたクセどころではおさまりきらないほどに強い個性を放っている方ばかりです。そして、この物語にもたくさんのそういったキャラクターが登場します。
その中でもわたしが特に好きなのは、新入部員のみりかちゃん。可愛いんです、けなげだし。みりかちゃん!すっごく!すっごく可愛いんです!!しかも、同じく新入部員の中島くんとのコンビがこれまた絶妙に可愛い。彼らの先輩になって、2人の頑張る姿を見守っていたいとすら思、いや、この話はここまでにしましょう。
ついつい盛り上がって脱線していく、カオスになってしまうといった描写や、大人数が各々フリーダムにわちゃわちゃしちゃう……そういった場面の節々から、わたしは高校時代に自分が所属していた演劇部を思い出して懐かしくなったりしました。
始まりから終わりまで、ずっと、とっても、ハッピーな作品です。皆様もぜひお気に入りの演劇部員を見つけてみてくださいね。
 
 
●B-3 ゆり子。(京都橘大学他)
『あ、東京。』

 脚本、役者さん、音照の効果、映像による演出……全ての要素が絶妙に絡み合った空間。個人的にBブロックの中でも特にお気に入りの作品です。
一分一秒すらも心から愛おしく、ゆったりと、ぽかぽかとした温かさを帯びて流れていく彼と彼女の時間。しかし、それが不意に加速した瞬間に一観客として立ち会ったとき、わたしはもう目を見開かずして観ることはできませんでした。
恋とか愛とかの対象として見ている人がいる時には、きっと誰もが悩まずにはいられない問題であろう『距離感』。近すぎたらよくない、かといって遠すぎてもよくない。それぞれの考えに妥当な理由があるかと思いますが、結局のところ、その当事者2人にとって心地良い距離感というのが何よりの正解なのであって、他人の口出しなどは極めて無意味に過ぎないものだなぁ、なんて感じました。それがたとえ、ひどく離れた遠距離であっても。ゼロ距離であっても、あるいは……それ以上に近くても。
 あらゆることを受け入れ、包み込んでくれる優しい場所があること、いいなぁ素敵だなぁと思いました。そして、好きな人や愛する人と食を共にできること、これって幸せなことだなって。
 わたしがこれ以上書くのはあまりにもったいなすぎるので、ここまでにしておきます。深く深く注ぎ込まれたこの純愛、皆様もどうぞご堪能ください。

京都学生演劇祭2018

京都学生演劇祭2018ホームページです。 公演情報や団体情報など多くの情報を掲載しています。 京都の学生劇団が集い、「今、京都で最もおもしろい舞台をつくる学生劇団はどこか」という問いに答えを出すべく、2010 年に始まった演劇祭。2018年は15団体が京都に集い、演劇祭を熱く盛り上げます。

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