初日観劇レポーター Aブロック(観劇オバケ)


●A-1 エイリアンズ(立命館大学)
『オールドブルー』(上演時間約42分)

 出演者四人全員が紺色のつなぎ作業服。関西小劇場の人気劇団テノヒラサイズを想起させる。出だし一人女性役者が出て来ての口上から作品が始まるのは今年三月のおうさか学生演劇祭で演じられたふわふわ中毒『すくすくのびのびしくしくよぼよぼ』ぽかったですね。
 エイリアン襲来が何を指すのか。。カワイヨウヘイの人生が語られる。ヨウヘイは特定の出演者が演じるのではなくヨウヘイの年齢に応じて四人の出演者が代わる代わる演じる。
 ヨウヘイが生まれる場面の精子が卵子に着床するところでミクロの世界の住人達(細菌やウィルスetc.)を「エイリアン」と表現するのかと思ったが違うみたい。
 ヨウヘイは小学校の時にバンノ(だったかな?)とウサギ小屋の動物を逃がしたり,中学生の時(だったかな?)にミユキという女の子に恋をしたり,大学生の時には就職活動で後れを取ったりして24歳で就職するも一年でクビといったようにヨウヘイの人生がどんどん進んでいく。ここらへんは「自分の色は何色か?」という言葉が印象に残っていますね。
 ヨウヘイはついに七十代になるが本人は三十代と思っている場面が最後にある。娘のマナエをミユキと間違えたり孫娘のヒロミ(だったかな?)が誰かわからなかったり。認知症を患っている様子のヨウヘイ。病気にもなっているのか治療のためにチューブを身体につけられることもあったようだ。このことがエイリアンに人体実験されていると思ったみたい。この場面は冒頭にもある。ヨウヘイは治療室から逃げ出す。そしてラストは。。
 男性役者ミワチヒロさんと五藤慎也さん御二人の声がよく通る。テンポも良く勢いも学生らしい。良い意味でお馬鹿な場面もあり退屈はあまりしない。女性役者掛橋浩美さんと今野愛恵さん御二人の声質も好きだったかな(笑)
 分かりにくいところもあったのと初日初回ということもあり基準点としての役割もあり抑え気味につけて6点。未だに私が理解できていない所もあると思うのですが。。 



●A-2 劇団洗濯氣(京都橘大学)
『桜散る頃、蝶は舞う』(上演時間約49分)

 『桜散る頃、蝶は舞う』という題名が関西小劇場の人気劇団STAR☆JACKSの作品『桜舞う夜、君想ふ』を想起する。当日パンフレットに脚本が誰か書いていない。こういう基本情報は記載しないといけませんよね。これはマイナス。検索しても出てこないのでオリジナル作品と考えてよさそうです。小野篁が出てくるので冥官説話を元にしているのかとも思いましたが関係は無いみたい。
 昔々帰蝶という女が男にフラれ堕胎した。帰蝶は男を恨んで(だったかな?)鬼となった。堕胎した娘は親から愛情を得られなかったことから生まれながら鬼となり母親の帰蝶を殺そうとする。これが雅。帰蝶は長い年月を経た後清十郎という男に優しくされ一緒に住むようになる。清十郎は帰蝶の昔の話を聞き小説として発表して儲けようとする。清十郎が帰蝶を利用しているだけで愛していないことを知った雅は清十郎を殺害する。そしてまた時は経ち現代。帰蝶は小説家志望の直樹に出会う。直樹の祖父も小説家だったらしく直樹の祖母は直樹の志望を応援している。しかし母親は文具会社を営んでおり社業を息子の直樹に継がせたい様子。直樹は帰蝶から帰蝶の過去を聞き小説にして発表し見事賞を獲得する。母親も小説家になることを認めるのだが。。最終的に雅は帰蝶を殺害する。
 篁が帰蝶や雅を唆しているような場面があるのだが篁は何がしたかったんだろう?というのがイマイチよく分からず。
 京都学生演劇祭で時代劇や和装が見られるとは思っていなかった(笑)
 帰蝶役折紙さんが中々華がある方。小野篁役皆本黄泉さんは台詞回しがとても好きだったのですが声が聞き取りにくいところがあったのが勿体なかったな。。7点。ただ上に書いたように幾つかマイナス点があるので今つけるならもう少し低くなりそう。



●A-3 ポゴラジオ9%
『えらび』(上演時間約38分)

 家族の物語。シミズテツヤ(だったかな?)役和多見慎太郎さんの一人芝居。前半と後半の一部分を除いて大部分は娘のカムロハル(だったかな?)へ送るビデオレターを撮っているという設定になっている。
 最初の方に誰かと話している場面が。「家族に戻りたいわけでは無い」という台詞が出てくる。その後電話で父親と電話をしている場面があり母親が亡くなったことがわかる。
 ここから娘のハルへテツヤが独白する場面になるのだがまず自分が本当の父親であることを明かす。町の旧家で未だに有力者であるカムロ家は自分とハルの母親であるエリカの結婚を喜ばなかった、と。この時点で上に書いた「家族に戻りたいわけでは無い」という台詞の場面はカムロ家とテツヤが話し合っているので無いかと思わせる。そしてテツヤは自分の今までの人生を語り始める。子供の頃引っ込み思案だったため母親に家から閉め出されたこと。母親が不倫をしていたこと。不倫相手の子供のコバヤシという男の子と仲良くなったこと。父親が新しい母親を連れて来てこの女性こそテツヤが唯一心から母親と呼べる女性であること。最後にハルの名前の由来にも触れハルに旧態依然のこの町を離れて外の世界に出るように勧めるような終わり方でビデオレターは終わる。
 最後に話していた相手は産みの母親。テツヤはビデオレターをまだハルに送ってないことやハルの母親エリカと離婚して町から出て行きコバヤシと日本全国を回りながら写真を撮り二度と町に帰ってくるつもりが無いことを話す。
 舞台に出てくるのは和多見さん以外はパイプ椅子とカメラのみのシンプルなもの。カムロ家や産みの母親と話す時とビデオレターを撮る時とはパイプ椅子の位置や向きを変えている。脚本そのものは起伏にとんでいたが語りが最後に謝る産みの母親に「謝るなよ!」と一瞬激する以外は基本淡々とした語りで進んでいくのでエンタメ好きな観客などにとっては退屈だったかもしれません。 観客賞は取りにくい作品でしょうね。 5点。ただ脚本自体は好きだったので今ならもう少し得点が高くなるかなぁ。。こうやってレポートを書きながら今日観た作品をあらためて思い出すと三作品の中では一番話がわかりやすかったと思います。一人芝居は和田見さんの挑戦ですね!
何れの作品もまだ消化できていない部分があったりしますが期限もあることなので掲載していただきます。(以上ここまで)


京都学生演劇祭2018

京都学生演劇祭2018ホームページです。 公演情報や団体情報など多くの情報を掲載しています。 京都の学生劇団が集い、「今、京都で最もおもしろい舞台をつくる学生劇団はどこか」という問いに答えを出すべく、2010 年に始まった演劇祭。2018年は15団体が京都に集い、演劇祭を熱く盛り上げます。

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