初日観劇レポーター Eブロック(マエ田マオ)

●E-1  睡眠時間(京都造形芸術大学)

『私が悲しいのは、あなたがわからないから。』


 とっても脆くて、激しくて、儚くて……。うーん、この作品を形容するにはどのような言葉をつかうのが適切なのか、わたしの頭では判断しきれない状態です。

 ただ確実にひとつ伝えたいことは、これは、誰それのあれが欠けているとか或いは狂っているとか、そういう見方も正解だと思うし、いやいやむしろ誰にだって起こり得る・共通しているテーマとして解釈するのも正解なのでは、と。

 わたしは自分が中学1年生になりたてだった頃に、当時の3年生の先輩方のことをすごく立派な大人に感じていました。高校1年生になった時にも、3年生のことをそのような印象をいだきつつ見ていました

しかしながら、いざ自分が中学3年生・高校3年生になっても、入学したての頃と自身の心持ちであったり、価値観であったりというものは、さほど何も変わっていなかった。全く成長できていないじゃないか、と感じたものです。あの頃自分が見ていたかっこいい先輩像というものが、自分の中にはまるでなくて。ちっとも再現できなくて。

 そう、なんか、そういったことだと思うのです。子供の頃に自分が思い描いていた未来が、大人になって辺りを見回してみたときにまるで実現していない。理想と現実の酷い不一致……。そのような経験に心当たりのある方、きっと少なからずいると思います。わたしも首をブンブンと縦に振りたいところでして。

 舞台美術に対する抜きん出たこだわりを感じたりもしました。

 いやぁ、極めて人間くさい部分もあった気がするなぁ、と、一人で考え込むだけではそろそろキャパオーバーになりそうなので、観劇された方はぜひわたしと意見交換してください。などと、切実に。



●E-2  劇団モンジュノ(京都産業大学)

『初恋ミサイル』


 もしも今回の演劇祭に『欲に忠実で賞』などという枠が存在していたとすれば、間違いなくこちらのモンジュノさんが受賞されていることでしょう。Eブロックでは3団体全てに共通することとして、『性』や『恋愛』をテーマとして描く作品が披露されていたのですが、その中でも最も強く、もう眩しいくらいに屈託無く『性』を叫び倒したのがこの作品。

 下ネタだらけだといってしまうとそこまでなのですが、いや、でも確かに終始一貫して下ネタの雨は降りやまないです。特に女性の観客であるならば、好き嫌いが激しくわかれがちになっちゃうかなぁとは思うのですが、しかしながら、ここまでハツラツとした清々しい舞台には初めて出会いました。わたしはめちゃくちゃ笑いました!楽しかったです!

 なんといっても今年は平成最後の夏ですし、あれやこれやとやりたいことを大声で叫んでもきっと許されると思います。そう、やりたいってことをさ、あれやこれやと――。



●E-3  魔法の××ランド(龍谷大学)

『どうしてもなれないあなたとすずのおと』


 ただでさえ、たくさんの劇団を観ることができてお得感満載である今公演。その上更に、こちらの作品はオムニバス形式になっているため、より満腹感を得られた気がします。わたしはこのレポートを書いている時点ではB~Eブロックの計12団体を観劇し終えている状態なのですが、その中でこちらの脚本は1,2を争うレベルで個人的に大変好みのつくりでした。

 きっと誰もが、外界に対して本当の自分を晒しきることなんてできなくて。

たとえば、学生にとっての死活問題であるスクールカーストだってそういうことであって。そこにおける自分のポジションを確実にするためなら、確かにちょっとくらいの無理したり意地張ったりしちゃうのです。ボケやツッコミという自身の役割を確立したり、本当の顔に仮面をかぶせてキャラをつくりこむことで自身を防衛するんです。

それは、傷つかないために。いや、本当は傷ついちゃうんだけど、その際の身代わりというか。心の拠り所なのかもしれないですね。

 ネタバレ部分に触れてしまう可能性があるので、この場には詳しくは書けないですが、わたしは相川弘樹というキャラクターをこれからもずっと応援していきたい所存でございます。どうか幸せになってほしい……!

京都学生演劇祭2018

京都学生演劇祭2018ホームページです。 公演情報や団体情報など多くの情報を掲載しています。 京都の学生劇団が集い、「今、京都で最もおもしろい舞台をつくる学生劇団はどこか」という問いに答えを出すべく、2010 年に始まった演劇祭。2018年は15団体が京都に集い、演劇祭を熱く盛り上げます。

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